空気圧の話、続きです。
前回はタイヤの空気圧の基本的なお話と、高めに設定しておいたほうがよい理由をいくつか書いてみました。
空気圧を適切に調整するのを難しくしている理由のひとつ、それがXL(エクストラロード)規格タイヤの存在です。
今回はそれについて詳しく書くとともに、いただいた質問の回答とさせていただきます。
ここでいただいた質問を再度紹介しましょう。
【質問:XL規格の空気圧について】
純正タイヤ225/55R17の車に乗っております。
このたび,新車装着タイヤの山がなくなり,そちらで新たにタイヤを購入する予定なのですが,検討しているタイヤがXL規格のタイヤ(TRANPATH mpZ,225/55R17 101V)でして,空気圧が純正指定と違うと思われます。ちなみにメーカー指定の空気圧は,フロント2.5(250kPa),リア2.4(240KPa)ですが,ネットにあった換算表の見方がいまいちよく分からず,それでもなんとか計算していくと,元の空気圧と変わらない数値がでてしまい,これが正解なのかどうかよく分かりません。
使った換算表はこれです。
http://tire.bridgestone.co.jp/about/tire-size/pressure-list/index.html
ご教示いただければ幸いです(テプラで車に貼っておこうと思っています)。
荷重指数(ロードインデックス)とXL(エクストラロード)
ご質問のお車の情報を整理します。
225/55R17 97V 純正指定空気圧 前輪2.5 kgf/cm2、後輪2.4 kgf/cm2
この車につけるタイヤが
トーヨー TRANPATH mpZ 225/55R17 101V XL
ですね。
ここで重要なのが「97」「101」という数字です。
これを「荷重指数(ロードインデックス=LI)」と言います。
1本あたりのタイヤが支えられる重さを指標化したもので、実際に支えられる重さを表したものではありません。
荷重指数97は、730kgまでの負荷に耐えられる設定になっています。
さて新しいタイヤのほうはタイヤサイズこそ同じですが荷重指数が97から101に変わる上に、「XL」という文字がついています。
これがタイヤの荷重指数がより高いことを示すXL(=EXTRA LOAD エクストラロード)という規格です。RFD(Reinforced=リーンフォースド)とも言います。
ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)が定めた欧州のタイヤの規格で、それぞれを直訳すれば「余計な負荷(に耐えられる)」「強化」となることでわかるとおり、強化タイヤであることを示しています。
XL規格となるタイヤはヨーロッパ、アジアメーカーの海外製タイヤ、国産タイヤの中でもよりスポーツ指向のタイヤなどがそれにあたります。
タイヤ側面のサイズの刻印脇に「XL」と記載されている場合もあれば、小さく「EXTRA LOAD」「REINFORCED」と刻印されているだけの場合もあるので注意が必要です。
これらXL規格タイヤの場合、通常のJATMA(スタンダード)規格の数値よりもかなり空気圧を高く入れないと、本来の力を発揮できず、思っている以上に片べり、両べりします。
よくある話で、ホイールをインチアップしたのに併せてタイヤを海外製にする方は多いですが、XLのことを知らずに純正指定空気圧のままにしてしまい、思っているよりも早くタイヤが減って驚く方が多いです。
XL規格のときの空気圧は?
ではどれくらい空気圧を高くすればいいのか。その場合に使うのが換算表です。各メーカーがウェブサイトで掲載しています。
ご質問にあるのはブリヂストンのサイトですね。
http://tire.bridgestone.co.jp/about/tire-size/pressure-list/index.html
表の見方自体はサイトに記載されているとおりです。
1)JATMA[乗用車用タイヤ空気圧~負荷能力対応表]の左列から、純正指定荷重指数を探します。
今回の例)97ですが、その下に「225/55R17 97」とあるのでそちらを見ます。
2)その欄を右にたどっていき、純正指定空気圧(前輪)が250kPaの欄にある必要負荷能力の数字を控えます。
例)730(kPa)であることがわかります。
ここでは表に合わせてkPaで説明します。
3)次にページの下のほうにある
ETRTO[EXTRA LOAD or REINFORCED 乗用車用タイヤ空気圧~負荷能力対応表]
から左欄にある「LI」で、交換するタイヤの荷重指数を探します。
例)101です。
4)表を右にたどっていき、数値が730に近いところを探し、その空気圧がXLの場合の必要空気圧となります。
例)735で250kPaとなっていますので、250kPa(2.5kgf/cm2)入れればよいことになります。ちなみに後輪は240kPaと算出されます。
当店では作業時にここからさらに0.2キロ高く入れて前輪2.7キロ、後輪2.6キロでお引渡しします。
空気圧が変わらない!?
ここまでXL規格の空気圧の確認の仕方を説明してきました。
たいていは純正指定空気圧より0.4キロほど高くなることが多いです。
ここで冒頭の質問になるんですね。
XL規格なのに純正空気圧と変わらないけどそれでいいの!?ということなんでしょう。
結論を書くと、今回の場合は元の空気圧と大して変わらない数値で正解になります。
これは単純に交換前と後の荷重指数の組み合わせの問題なので、どちらかの荷重指数が変われば空気圧も変わります。
そういうものだと思っていただいて問題ありません。
そこでくりかえしになりますが、当店では作業時にここからさらに0.2キロ高く入れて前輪2.7キロ、後輪2.6キロでお引渡しします。
タイヤサイズも大きいですし、車の重さ等を考えて、この空気圧を普段から入れておいて問題ないと思います。
というわけで、2回に分けて空気圧とXL規格の話を書いてみました。
いよいよ夏です。真夏は路面温度も高くタイヤにも負担がかかります。
ぜひ参考にして安全なドライブライフをお過ごしください。